斉諧俗談144
斉諧俗談 144
〇女郎石[じょろういし]
三河の国宮地山[みやちやま]の麓に、三頭山長福寺[さんとうざんちょうふくじ]という寺がある。その境内にある山の上に奇石があり、女郎石と呼ばれている。その大きさは一尺余り、下のほうがすぼんで、高さは四尺ばかり。仮に立ったようで、地面の下にどれだけ埋まっているのかわからない。試しに掘ってみたものの、一丈ほど掘ってもまだ底が見えない。伝承に言う、昔、この宿駅に力珠女[りきたまひめ]という娘がいた。大江定基
〔割注〕後に寂照法師となった人。
という人と交わったが、その後、定基はふっつりと来なくなった。娘は恋焦がれて、とうとう病死してしまった。その魂魄がこの石に化したのだといわれている。
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