斉諧俗談133
斉諧俗談 133
〇石油[いしのあぶら]
日本書紀に言う、天智天皇の七年に、越後の国より燃える土と水とが献上された、と。
按ずるに、これは石油のことである。越後の国村上の近所の山の麓の黒川村という所より 出る。石油は泉の水と混じって出るため、土地の人たちはその上を屋根で覆い、草に伝わって缶[かめ]の中へ入るようにしてある。多く集めて燈[ひ]に燃やせば、とても明るい。しかし、その臭いは硫黄のように臭い。このため、俗に臭水油[くそうずのあぶら]と言う。また、同国寺泊村[てらどまりむら]、柏崎村からも出る。近江の国栗本郡[くりもとごおり]石部村[いしべむら]と武佐村[むさむら]では、山野を掘って燃える土を採取している。土は黒くて少し赤い色が混じる。土地の人はこれを採って薪に使っている。この土も臭い。伝承に言う、昔、神代の時代に栗の大木があった。やがて枯れて倒れ、土の中に埋まること数十里に亘る。このことからここを栗本郡というようになったとか。燃える土が出るのもこのことによるという。
0コメント