斉諧俗談99

斉諧俗談 99

〇七難揃毛[しちなんのそそけ]

下総の国豊田郡石下村[いししたむら]に、東弘寺という一向宗の寺がある。この寺には什物が多く、その中に七難の揃毛[しちなんのそそけ]というものがある。色は五色で、長さは四丈あまり。何の毛であるかはわからない。言い伝えでは、近江の国竹生島(ちくぶじま)、信濃の国戸隠山(とがくしやま)にも同じものがあるという。昔、一人の変わった婦人がいた。名を七難という。その人の陰毛であるということだ。

 按ずるに、塵塚物語にも、竹生島七難の揃毛の事を載せ、また近世印行された竜宮船[りゅうぐうぶね]にも見えている。


[語釈]

塵塚物語 室町時代の説話集。奥書には1552年(天文21)成立,藤原某の作とあり,また69年(永禄12)の序文があるのでこのころの成立と考えられる。上代以降,おもに鎌倉・室町時代の重要人物の人格・逸話や,徳政などの歴史的な事柄に関する話65編を収録する。記載内容は厳密性を欠き,近世的な感覚による叙述もみられ,その信憑性は低いが,中世の風俗や慣習を多く伝える。《改定史籍集覧》所収。[世界大百科事典 第2版]

竜宮船 近代奇事論竜宮船。宝暦四年刊の滑稽本。著者は張朱鱗(後藤光生)。

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