斉諧俗談98
斉諧俗談 98
〇火浣布[かかんふ]
神異経[しんいきょう]に言う、荒外[こうがい]に大山がある。その中に燃え尽きない木が生えている。昼夜を問わず燃え、暴風でも勢いが増すことがなく、大雨でも消えることがない。そこにネズミが棲んでいる。重さ千斤、毛の長さ二尺余あり、しかも毛は糸のように細い。火の中にいる時は赤くなり、外に出ると白くなる。水をかけると死んでしまう。その毛を取って織って布として使う。その布が垢で汚れたなら、火の中に入れて焼けば垢がきれいに落ちるということだ。
按ずるに、本草綱目に言う、火鼠[かそ]は西域および南海の火州より産出する。その山に野火[のび]がある。春夏に発生し、秋冬に消える。そこで火鼠が生まれる。形はとても大きく、毛およびその土地の草木の皮を取って布を織る。もし汚れたならば、火にくべて焼けば綺麗になる。これを火浣布とよぶという。
[語釈]
火浣布:中国南部の火山に住むとされる想像上の動物,火ねずみの毛で織り,よごれたとき火に投入れるとよごれがとれると伝えられる織物。『竹取物語』にも「火ねずみのかわごろも」とある。平賀源内は石綿で同様な織物をつくり火浣布と名づけた 。
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