斉諧俗談82
斉諧俗談 82
〇崑崙奴[くろんぼう]
阿蘭陀船[おらんだぶね]の中に色が黒くてとても身軽で、よく墻の上を走り回る人が同乗していた。俗に黒坊[くろんぼう]という。久呂牟[くろん]とは崑崙[こんろん]の唐音である。坊とは髪のない人の通称。また飛騨の国や美濃の国の山中にも、黒坊というものがある。その形は猿のようで大きく、色は黒くて毛が長い。立って歩行する。人の言葉を話し、人の言うことを理解する。危害を加えることはない。山人はこれを黒坊と呼んでいる。お互いに恐れることはなく、もし殺そうとする者があれば、黒坊は察知してすぐに逃げ去るために、捕まえることはできないという。
[語釈]
崑崙奴 中国の三国時代以降,南海方面の黒い皮膚の奴隷に対する中国人の呼称。僧祇奴,鬼奴,烏番黒,小厮番,小厮などとも呼ばれた。
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