斉諧俗談76
斉諧俗談 76
〇飛頭蛮[ろくろくび]
三才図会に言う、大闍婆国[たいしゃばこく]の中に、頭を飛ばす者がいた。その人、目に瞳がなく、その頭[くび]はよく飛んだ。人々は虫落[ちゅうらく]と名付けて祀った。ここから落民と名付けられた。漢の武帝の時、因チ国[いんちこく→※]という人が南方に使者として派遣された。現地には解形[けいぎょう]の住民がいた。まず頭を南海に飛ばし、左手は東海に飛ばし、右手は西沢[さいたく]に飛ばした。暮れになると頭は自分の肩の上に戻った。もし両手が疾風に遭うと、海の上に翻るという。また南方異物志に言う、嶺南の渓洞(けいどう)の中に飛頭蛮[ろくろくび]がいた。項[うなじ]に赤いあざがある。夜になると、耳を翼にして飛び去り、虫を喰う。明け方に帰り、元の姿になった、と。また捜神記[そうじんき]に言う、呉将軍朱桓[ごしょうぐんしゅかん]という人の下女の頭が、夜になるとよく飛んだ、と。太平広記に言う、飛頭獠[ひとうりょう]は善郤[ぜんげき]の東、竜城の西南の地にあり、広さは千里四方、その地はすべて塩田である。その嶺南の渓洞の中に、時々頭を飛ばす者がいた。頭を飛ばす前日になると首筋に紅の筋のようなあざができる。妻子はこれを見て飛ぶのが近いことを知る。その人は夜になるとまるで病人のようになり、たちまち頭が身から離れて飛び去り、岸に行って蟹やみみずの類を食べた。明け方になると元に戻り、夢から覚めたように正気に返った。腹は満腹の状態だったという。
※文中の「因チ国」のチは↓コレです。
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