斉諧俗談65
斉諧俗談 65
〇失帰妖[しっきのよう]
公卿補任(くぎょうぶにん)に言う、武内宿禰は孝元天皇五代の孫である。景行天皇九年己卯(きぼう=つちのとう)の年に生まれた。仁徳天皇七十八年庚寅(こういん、かのえとら)の年に薨去。すべて六帝に仕え、齢(よわい)三百十二歳。最期がどうなったかは分からない。ある人が言うには、美濃の国不破の山に入ったまま姿が見えなくなった、と。また別の人は、東征の時、戦(いくさ)の最中に薨去し、大和の国葛下郡に葬られた。その墓を室墓[しつぼ]と名付けたという。道守臣東人[みちもりのしんあずまんど]はその齢百二十二歳にして、若者のように聡明であった。桓武天皇が衣服を下賜されたという。 つづく
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