斉諧俗談64

斉諧俗談 64

〇無手人[とくりこ]

延宝年間に、摂津の国大坂にて、生まれながらにして両の手のない人がいた。足で手の代わりをしていた。芝居に出ては足で字を書いたり、弓を射ったりして、銭をもらっていた。

酉陽雑俎[ゆうようざっそ]に言う、大暦年間に、東都の天津橋[てんしんきょう]に一人のみなしごがいた。両の手がなく、右の足で筆を挟み、経文を写しては銭を求めた。経文を書く時は、まず足で筆を上に一尺ばかり放り上げ、それを足で取っては書き、また放り上げては足で取って書くということをした。そして一度も取り落とすことがなかった。文字は丁寧で、常人が手で書くものに勝るとも劣らないほどであったという。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。