斉諧俗談46
斉諧俗談 46
〇伶人助元[れいじんすけもと]
伶人の助元は助種の父である。横笛が得意で、霊妙なほどである。ある時、ちょっとした罪により、左近府の牢へ繋がれた。この牢内には大蛇がいて人を襲うという。助元はそれを聞いて大いに怖れた。果たして、夜半に大蛇が現れた。頭は獅子、目は銀の鍋のようであった。舌は三尺ばかりもあり、大蛇は口を開けて助元を呑もうとした。助元は逃げようとするも牢から出ることができない。とっさに横笛を出して還城楽[げんじょうらく]を吹き始めた。すると大蛇は頭を上げ、耳を傾け、笛の音を聞くと、そのまま退散してしまった。助元は難を免れたということだ。
[解説]この話は「十訓抄」第十 才芸を庶幾すべき事に見えています。ほぼ同じです。「十訓抄」によると、助元は職務怠慢により牢に入れられたとのこと。
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