斉諧俗談42

斉諧俗談 42

〇鏡中観音[きょうちゅうのかんのん]

元亨釈書(げんこうしゃくしょ)に言う、相模の国鎌倉に、巨福山建長寺[こふくざんけんちょうじ]という寺がある。この寺の什物の中に、開山大覚禅師が所持されていた鏡が一面ある。大覚禅師入寂の後、この鏡に禅師の姿が映っており、観音の像に似ている。このことから鏡中の観音と呼ばれるようになった。北条時頼がこれを聞き、鏡を磨かせてみた。磨く前はぼやけていたが、一磨きすると姿が鮮明になり、大悲の相が具わっていたことから、時頼は大いに悔いて深々と礼をしたという。その後、寧一山[ねいいっさん]がこの記録を作ったという。


[語釈]

元亨釈書 鎌倉時代末期の仏教史書。 30巻。虎関師錬 (こかんしれん) 著。元亨2 (1322) 年成立。仏教の伝来から鎌倉時代末期まで 700年間の仏教史で,内容は『史記』によって伝 (巻1~19) ,資治表 (巻 20~26) ,志 (巻 27~30) の3部から成り,伝は讃や論を付す。伝は中国の高僧伝を規範とする。日本最初の通史的僧伝として仏教史上価値が高く,また禅僧の思想を知るうえに貴重であるが,親鸞を除き道元を軽視するなど,多少の偏見があることがすでに指摘されている。(ブリタニカ国際大百科事典より)

大悲 仏教用語。衆生(しゅじょう)の苦しみを救う仏・菩薩の大きな慈悲。大悲の相は慈悲に満ちた優しい表情。

鏡面

鏡背

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