斉諧俗談30
斉諧俗談 30
〇愛宕山鳶[あたごやまのとび]
ある書物に言う、天人熊命[あまのひとくまのみこと]が化けて三軍の幡(はた)となった。その後、神武天皇は長髄彦(ながすねひこ)と戦われたが、勝つことができなかった。時に金色の鳶が飛来して、天皇の弭(ゆはず)に止った。その形は流電のようであった。これを見た敵軍は大いに惑い恐れた。天皇は喜ばれて「いずれの神ぞ」と問われた。答えて言う、「天照大神の勅命を奉じ、鳶に化けて来ました。私、この国に住み、戦(いくさ)を守りましょう」と。「どこに住まれるおつもりかな」「山背(やましろ)の国怨児[あたご]の山に住みとうございます」そこで希望通り怨児(愛宕)の山に住まわせ、天狗神を支配させた、と。
[解説]愛宕神社は火伏せの神として崇められ、鳶は神の使いとされています。昔、火消しとして鳶職が従事したものですが、その「鳶」は愛宕神社の鳶に由来すると言われています。
0コメント