斉諧俗談18

斉諧俗談 18

〇水闘[みずのたたかい]

宋史に言う、「高宗の時、紹興十四年楽平県で黄河が決壊、田数百頃が潰された。やがて田の中の水は独りでに立ち上がり、何者かに吸われるように上昇し、その高さ数尺、堤防に従うことなく流れて行った。また、村の南にある家の井戸からも水が数尺上り、虹のようにあでやかに、しかもその音は雷鳴のように轟き、垣を壊し楼[やぐら]を崩して流れ、二つの水が杉墩[さんどん]という所で出会い、戦った。或いは進み、或いは後退し、十余刻ほど経って鎮まり、それぞれ元の所へ帰った」と。また説海記(せつかいき)にも水闘の記事を載せている。


[語釈]

高宗 南宋の初代皇帝(在位1127年―1162年)。北宋第8代皇帝徽宗(きそう)の子,欽宗(きんそう)の弟。靖康(せいこう)の変によって宋朝が倒れると,南方に走って即位。いわゆる南宋を建てる。1129年杭州に都して臨安府と名づけ,金に対して淮水(わいすい)以南を保つ。秦檜(しんかい)を用いて1141年金との和議を結び自ら臣と称した。

尺 中国での尺は日本のものより若干短く、宋代は29.6cm前後。古くはもっと短かったが、唐代になって長くなった。

 説海記 この書名の作品は存せず、伝奇集『古今説海』を指すか、あるいは類書等に引く逸書と思われる。唐代以降、各地に伝わる不思議な話を集めることが盛んとなった。唐以前には志怪小説が多く作られ、この流れを汲むものも多い。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。