斉諧俗談10
斉諧俗談 10
〇降怪雨[あやしきあめをふらす]
和漢三才図会に言う、「元禄十五年の九月、連日綿が降るということがあった。巳午(みうま)の時空は晴れ渡り、日の光が赤色を帯びて、日輪の中から出るようで、ふわふわとした状態で土塀に降り注いだ。その形は蜘蛛の糸、あるいは蓮の糸、または綿糸に似ている。色は白く、長さは二、三尺ばかり。試しにこれを燃やしてみたが臭いはなく、切ってみたが脆(もろ)くはない。いまだ何物かは分からない」と。
五雑俎(ござっそ)に言う、「天から毛を降らし土を降らせるの類は、史伝に多く見られる。元(げん)の至元(しげん)四年、七昼夜にわたり土が降り、深さ七、八尺、牛馬はこれがためにことごとく埋もれて死んでしまった。古代よりいまだ聞いたこともない変事である」と。
[語釈]●和漢三才図会 わかんさんさいずえ。大坂の医師寺島良安(りょうあん)により江戸時代中期に編纂された類書(百科事典)。正徳2年(1712年)成立。105巻81冊。平凡社の東洋文庫所収。 ●五雑俎 中国、明末の随筆。16巻。謝肇淛(しゃちょうせい)著。1619年成立。明代の政治・経済・文化・科学などを、天・地・人・事・物の5類に分けて考証したもの。江戸時代に和刻本が多数出版され、広く読まれた。明徳出版社の中国古典新書所収。
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