政談455
【荻生徂徠『政談』】455
(承前) 総じて聖人の道は、元来治国平天下の道であることから、政務に最も必要なものであり、昔からそのようにされてきた。その上、人の器量には得手・不得手があり、一人でいろいろなことを兼ねることは出来ず、ましてや小身では広範囲には力が及ばないことから、日本でも古くは四道の儒者というものを置き、第一に紀伝道というのは歴史を博く調べて、詩文を専門とする。異国の御用は我が国にとって晴れがましいことであるから、特にこれに力を入れる。菅家(かんけ)・江家(ごうけ)が担当する。次に明経道(みょうきょうどう)は十三経(じゅうさんぎょう)を家業とする。清家・中家が担当。明法道(みょうぼうどう)は律令格式(きゃくしき)を専門とし、坂上(さかのうえ)・中原が担当。算道は算数で、暦学・天文を兼ねる。小槻(おづき)・安倍等が担当。この他兵学は江家にて伝え、八幡太郎も大江匡房から兵学を伝えられた。
[語釈]●菅家・江家 菅原家と大江家。 ●十三経 儒家が重視する経書13種類の総称。 宋代に確定した。内訳は、『易』『書』『詩』『周礼(しゅらい)』『儀礼(ぎらい)』『礼記(らいき)』『春秋左氏伝』『春秋公羊(くよう)伝』『春秋穀梁(こくりょう)伝』『論語』『孝経』『爾雅(じが)』『孟子』。 ●清家・中家 清原家と中原家。 ●八幡太郎 源義家。
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