政談444
【荻生徂徠『政談』】444
(承前) また、今は官板の発行を命じられるものの、幕府に版木を管理する部署がないため、町人の委託となり、ために町人の利益が倍加する。官板という名すら実を伴っていない。中国では監本というものがあり、学校に版木を納めておき、必要に応じて印刷して販売させ、その利益を学校での手間代に充てさせている。官板の対象となる書籍は、幕府より資金を貸し付け、版木に彫らせてその版木を右に述べた稽古所に置き、ここで印刷させて発行させたならば、二、三年の内には貸し付けた金も返納できよう。さらに、後々まで稽古所の修理など、書生を置く所は幕府の力を借りることなくやれることだろう。稽古所が学校のようになるのは、その儒者の器量次第である。
[語釈]●監本 国子監(こくしかん。国家の教育行政を統括する官庁。隋代にはじまり、清代まで続いた)で校定・刊行した書物。画像は清の光緒9(1883)年の監本詩経。
[解説]武将でありながら文治政治を重視した家康は幕府に命じて漢籍類の出版を大量にさせた。その後中絶し、5代綱吉の時に復活。その他また中絶して、8代吉宗の時また復活した。徂徠の死後に更に盛んに出版された。画像は昌平坂の官板四書纂疏(ししょさんそ)。
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