政談430

【荻生徂徠『政談』】430

 ●田地売買の事

 田地売買禁止の触れは、家康公によるものという。これは、百姓が田地を売って町人になることを制限するという趣旨であろうか。そうでないのならば、古の口分田(くぶんでん)の制度を取り違えて、その当時の学者の申したことを採用されたのであろう。

 田地家屋・家財・奴婢は古法では売買の対象となっている。田地家屋も奴婢も家財であるから、困窮すれば処分しなければ生活ができない。口分田とは、古令の定めでは、男子二十歳で口分田を賜り、六十一歳になると返上する。口分田は公儀へ返すものであるから、売買することはできない。永業田というのは、永くその家が所有して代々伝える田のこと。これは公儀から賜ったものであるが、売買ができた。


[語釈]●永業田 公儀から下賜され、子孫が相続する田で、生活の困窮などにより売買することが認められた。もとは中国の北魏の均田制に始まり、隋唐と継承された。


[解説]徂徠は家康の時に田地の売買が禁止されたか、とするが、実際には三代家光の時。寛永20(1643)年に大飢饉対策の一つとして発布された。

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