政談421

【荻生徂徠『政談』】421

(承前) このような僧の乱れについては、学徳ある僧を本山の住持とし、その僧に導かせるのがよい。不学の僧は利得のことばかり頭にある。学徳ある僧は名誉を重んじることから、宗門の中興の祖として功を立てることを悦びとするから、きっと尽力することだろう。但し、すべての宗がそのようにする必要はない。二ないし三宗ほどの風俗が改まれば、他の宗も影響されて直るはずである。孔子の語に「これを導くに徳を以てす」とあるのは、徳のある人に導かせるという意味である。徳ある人を上に据えて導かせたならば、苦労せずに直る。下の者たちが心服する人であるゆえ、風になびく草のように服すのである。しかし、これでも行き届かぬ所は制度を立てて、「これを斉(ととの)うるに礼を以てす」と言っている。一切の治めはみなこのようにする。とりわけ僧は一般とは違う世界の者だから、なおさらこのようにしなければうまくゆかないのである。


[語釈]●孔子の語に云々 『論語』為政篇にある。

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