政談407
【荻生徂徠『政談』】407
(承前) 三代の古も、唐朝の法にも、また日本の律令も、官吏には徒罪の規定がない。唐律で官吏の罪で徒罪に該当するものとして官当(かんとう)というものがある。これは官吏の階級を一つずつ剥奪し、これを徒罪の代わりとするのである。任官・叙任の時、綸旨(りんじ)・位記一度一度にあることゆえ、これを一階ずつ取り上げることにより、今の官職を奪われても前の官職が残る。たとえば少将より中将を歴任して三位(さんみ)宰相に昇任した人が徒罪を犯した場合、三位宰相を解官するために前宰相と名乗ることはできず、前中将と名乗ることになる。また中将の綸旨を取り上げられたならば、前中将と名乗ることはできず、前少将と名乗ることになる。また四位の人が位記を取り上げられたならば、四位の位田を減じて五位の位田を取らせる類、これが官当の法である。ことごとく官位とも剥奪し尽くした時は庶人となる。
[語釈]●官当 律令制における官人に対する換刑制度のひとつ。徒刑・流刑に相当する者が官位・品位・勲位を返上して実刑に代える措置。現在の位記・勲記を破毀して現在の官職を解官されることになる。
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