政談405
【荻生徂徠『政談』】405
(承前) さらに、百姓などは田や家を没収して、その村で小作人とすれば、追放するには及ぶまい。田地を持たぬ百姓や零細な町人らは、どこへ行っても同じ身分であるから、追放はなんの役にも立たない。追放という刑をがあるから世間に悪人が絶えない以上、徒罪を設けて、追放は廃止させたいものである。
[解説]本書が完成する前の享保7年(1722)、幕府は追放の制限令を出し、みだりに追放の刑を下さないようにさせた。追放の刑はその土地から追い払うに過ぎず、改悛の気持ちがなく、さらによその土地ではなかなか生計を立てることができないため、結局はその土地でまた悪事を働くことになる。そのため、あくまで現住地にとどめて徒刑、つまり懲役に服させるほうがよいと徂徠は説く。
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