政談399
【荻生徂徠『政談』】399
(承前) さて、流罪・お預けなどの次は、牢下し・改易・追放の類である。牢下し(ろうくたし)は異国の律にも日本の古の律にもないものである。牢に入れておくのは罪の審理がまだ終わっていないうちのことで、長く牢に入れておくのは淹囚(えんしゅう)といって、逆に刑罰を司る役人の罪である。これは、賄賂を取り、または私怨があって無理に罪を着せたものの、申しつけるべき罪状がないため、まだ詮議が終わっていないと言って牢に閉じ込め、そのまま牢死させてしまうことが多いことから、役人の罪となる。また、迅速に公事(くじ)の裁決をしようとせず、だらだらとして引き延ばしを図る。これも役人の罪となる。また罪人を牢に入れておき、ひたすら尋問を続けて犯罪者と認めさせることも多々ある。これも律により禁じられていること。今もこのようなことが行われているが、律が戒めているようによろしからざることである。
[語釈]●牢下し 牢朽(ろうくたし)とも。体が朽ちるほど長く牢に入れたままにすること。正式な刑罰ではない。
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