政談397

【荻生徂徠『政談』】397

(承前) 七、八十年以前は、荘内(しょうない)・最上(もがみ)へ流された類もあった。これは流罪とは名ばかりで、当時のお預けのことであろう。さて、流罪の下はお預けである。これは貴人に対するもので、古の中流・近流に当たる。番人をつけて厳しく見張り、一室に入れて剃刀(カミソリ)や毛抜きなどの刃物を与えない。一方で預り主より丁重に馳走をするのは、貴人だからである。大名の家来などのお預けになると預り主の裁量で放置し、ただ預り主の国を出ないようにさせるのなどは、いよいよ古の近流・中流そのものである。公家・大名・御旗本などを遠島に流させるのは、ただその身の罪だけではない。その親類にも高位高官の人がいることから、本土から離れて容易に通うことができない所へ置き、恥辱の目に遭っていることが聞こえないようにして、その親類に無念と思わせないための配慮でもある。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。