政談392

【荻生徂徠『政談』】392

(承前) さらに、大坂では下級の者の逃亡が常に発生している。逃亡は多くは御城外へ出て定められた刻限までに戻らないため、その時点で逃亡となる。また、行方不明となることもある。多くは博奕などの意趣により、海へ突き落して殺すなどするのであろう。また、逃亡した者が十日ばかり経ってから御城内へ来て、そのまままたどこかへ行ってしまうこともあると聞く。不思議千万なことである。つまり、御堀を越えて来る方法がないため、御門から出入りをするか、御城内に隠れているか、このどちらかしかない。総じてあまりに規則が厳しく、何か起きれば探索をするのが困難なため、各自問題を起こさぬよう問題を起こさぬようにと御番衆に常日頃言い聞かせる一方で、逃げ出す理由を確かめようともせず、実情が分からないのである。法を末端にばかり厳しくして、法の趣旨がよく伝わらないと、必ずこのような状態となる。大坂御番に限らず、今はいずれの部署もみなこのようである。よくよく理解しなければならない。


※訂正 回数に誤りがありました。389回が重複していました。あとの方の389回は390回に訂正します。なお、内容については重複しておりません。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。