政談389

【荻生徂徠『政談』】389

 ●大坂在番の事

 大坂城を警固する大番頭(おおばんがしら)も御番衆も、御城中で病死した場合、その日の夜中ただちに家来ともども城を引払うことが定法であると承知している。これもこのままでよいのだろうか。諸大名の家中も江戸屋敷にて病死すれば、その日の夜中に送り出す。これも定法に準じたものである。人には頓死もあるもので、死後三日間は葬らずそのまま安置する。死ぬとすぐそのまま死骸を外に出してしまうというのは、人情において死を憐れむ道に欠けていると言わざるを得ない。


[語釈]●大坂在番 大坂定番。江戸幕府の職名。1623年に創設され,老中支配。大坂城の諸奉行を統括し,城内の維持管理にあたる。2〜3万石の譜代大名が任じられた。大坂城に在勤。定数は京橋口定番・玉造口定番各1名。月番制で,任期は不定。与力30騎・同心100人が付属し,役料3000俵。役宅も支給された。なお大坂在番にはほかに大番・加番・目付があった。徂徠の言う大番頭は大坂定番のこと。

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