政談379

【荻生徂徠『政談』】379

 さらにまた、人に刀を抜きかけられて、相手にせずその場を立ち去った人に対して、武家の風俗として臆病者呼ばわりするのはいかがなものか。これは元来、戦場で士卒が逃げると軍(いくさ)が負けになるため、逃げるは臆病と言うようになり、今に至るまで逃げることを臆病と言うのである。しかし、これは大将が葉武者を仕込む上でこのような言い方をしたもので、それが武家の風俗となった。戦場は公の忠義である。喧嘩は私の闘諍である。場によって区別すべき。


[語釈]●葉武者 端武者とも。取るに足りない武者。木端(こつぱ)ざむらい。雑兵(ぞうひよう)。

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