政談370

【荻生徂徠『政談』】370

 ●検校の跡目両番に入るる事

 検校の跡目を書院番と小姓組の両番に入れるのは、いわれのないことである。検校に仰せつけられたことから始まったという。それは元来、検校が武士であればもっともなことである。その後、幕府に召し出されて御扶持を下された検校の跡目(息子)までは濫吹(らんすい)である。座頭はその弟子より金を取って生活をする者で、乞食に似た者である。御扶持を下されて、御側近くへ仕えるが、あくまで坊主格である。検校といって紫衣(しえ)を着用するから、皆検校を高位と思い込み、不学な御老中などによって両番に入れてしまったのであろう。


[語釈]●濫吹 竽(う)が吹けないのに合奏団に紛れこんでいた楽人が独奏させられることになり、それを恐れて逃亡したという「韓非子」の故事から① 無能の者が才能のあるように装うこと。また、過分な地位にあること。濫竽。② 秩序を乱すこと。狼藉。ここは①の過分な地位にあること。 

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