政談368

【荻生徂徠『政談』】368

 ●女中の跡目の事

 女中の跡目を立てるというのは、謂われのない事である。これも婿養子というのが混乱して出来たものである。母があるのを知り、父があるのを知らないのは、禽獣である。田舎で百姓の家に生まれた父なし子を釜譜代(かまふだい)と言って殊の外卑しめるのに、恥辱となることをわざわざして旗本に列することなどあってはならない。慈母といって、子がない女に母の役をさせるのは古来よりある。右の女中で親類の中から旗本で禄を頂いている人を探し出してその人の母とし、法事などもその家で執り行わせるようにする。その女の苗字を名乗らせて跡目とさせるなど、あるまじき事である。

過去の出来事

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