政談365
【荻生徂徠『政談』】365
●妾を隠し物とする事
妾というものはなくてはならないものである。今は妾を隠しもののようにする風潮があるが、悪いことである。古の天子・諸侯ともに一妻九女といって、他国から妻を迎えると、その国からは他に姪(めい)や娣(いもうと)ら八人を付けて寄こしたものだ。いずれもその后の親類で、しかも家来の娘である。卿大夫については記述がない。古は世襲の官でなければこの法が適用されなかったからだろう。しかし、子がなければ妾を置くのが通法である。今の世は身分の上下ともに表向き一妻一妾ということになっているため、妾は隠しものとなり、却っているいるな悪事が生じることとなった。
[解説]『白虎通』(びゃっこつう)に、「天子諸侯は一娶九女とはどういう意味か。国が継嗣を伝えるのを重んじるからである」(天子諸侯一娶九女とは何ぞ。国継嗣を伝ふるを重んずればなり)とある。天子や主君が妻の他に多くの妾(側室)を持ったのは、ひとえに血筋を絶やさず、国がいつまでも存続するためのものであるとする。
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