政談357

【荻生徂徠『政談』】357

 ●妾を御部屋と号する事

 子を持つ妾を御部屋と名付けて、朋輩、諸親類へも取り交わしをさせ、家来には様をつけさせて呼ばせ、その妾の召使いの女房より諸事の格式まで、本妻とほとんど変わらないようにするのはよろしくない。五、六十年前まではこんなことはなかったが、綱吉公の頃より始まり、今は世の中の通法のようになっている。


[語釈]●御部屋 御部屋様。5代将軍綱吉のころまで、将軍の側室は京都や江戸の町人の娘などさまざまな階層の者から選ばれた。一般に庶民の方が健康的で体力もあったため。子供を産むと大奥内に部屋を与えられ、御部屋様と称された。綱吉との間に一男一女をもうけたお伝の方は、「御袋様」と称され、独立した御殿を与えられ「五の丸様」とも称された。御部屋様の近親は取り立てられて大名になることもあった。しかし、江戸時代後期になると、将軍の側室はほとんどが御中﨟(おちゅうろう)の中から選ばれ、御次(おつぎ)など他の女中で将軍の手が付いた者も御中﨟に昇進した。将軍の手が付いただけだと御中﨟のままだが、子供をもうけると「御腹様(おはらさま)」となり、部屋を与えられ、老女上座、姫君様格などの身分を与えられて「御部屋様」となった。

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