政談354
【荻生徂徠『政談』】354
(承前) 私は以前、ある人が『法華経』に見事な錦のような布切れで糸目が不調法なのがつけてあるのを見て、「それはどういったものですか」と聞いたところ、その人が言うには、「昔は后として立てられる方には、禁裏の御作法でこの切れをちょっと織ることができなければ、后として立てることを認めなかったのです。これは十三になられた后が織られた切れです。ありがたい物なので、御経につけているのです」と。日本の古礼も、皆異国の聖人の礼を手本として、このような殊勝なことも昔には行われていたが、今は跡形もなくなってしまった。
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