政談350
【荻生徂徠『政談』】350
●女嫁して後、夫の家風に従うべき事
妻は夫に従うのは道であり、礼である。しかるに今の世の風俗は、夫の家の家風には従わず、妻の親元の家の家風を夫の家に持ち込み、好き勝手に振る舞っているのは以ての外である。天子の姫宮といえども、臣下に嫁する時は降嫁と称して天子の家風を立てず、同姓の諸侯を親元とし、天子の礼を捨てて諸侯の礼を用いる。諸侯の娘も、その家来へ嫁する時は、父の諸侯を親元とせず、同姓の家来を親元として、諸侯の礼を捨てて大夫の礼を用いる。これによって天子の姫宮を公主と言うのは、諸侯を親元にするためである。諸侯の娘を翁主(おうしゅ)と言うのは、諸侯を親元にするからである。これは古の聖人の法である。後世はこの礼が廃れて、公主を尚(しょう)するという事が起こり、夫は妻を主君のように扱い、諸事の格式は不相応に過ぎ、さまざまな悪事が生じているのは、歴代の例でも明らかである。
[語釈]●公主・翁主 いずれも中国の漢代以降に使われた称。 ●尚する 身分の低い者が高い者と結婚すること。特別用語。
[解説]徂徠も時代の人であり、思想や考え方が先進的でも、この段のような考え方をする部分があるのは仕方がない。我々はこの考え方も踏まえて、どういう形がよいのかを常に考え、実践してゆかなければならない。
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