政談341

【荻生徂徠『政談』】341

 ●婚姻に金を取る事

 婚姻にあたり金を取る事は、今の風俗になっている。これによって娘を多く持つ者は家計が苦しくなる。金が惜しいために相手を求めようとせず、男女ともに年を取っても独身で、子孫が乏しいといった類も多い。また、不相応な人の娘を取親(とりおや)をして妻とする類も多い。久しく独身でいると、遊郭へ行き、金を使い、悪い病気にかかり、或いは妾を置くなど、さまざまな悪事等が生じる。一方、公家や田舎の百姓はだいたい二十歳までに婚礼をすることから、子孫が多い。どちらも悪いことであるが、それぞれ内向きのことだから仕方がない。武家を知行所に置けば、おのずからこの悪風はなくなるだろう。さもなければ、しばらく縁組を司る役人を立て、願い出は受け付けず、上が決めて仰せつけられれば、この風俗は止むことだろう。


[語釈]●取親 仮の親。養父。武家の息子と町人の娘のように身分違いの男女を結婚させる場合、娘を一旦、他家(武家)の養女とし、身分を武家の娘にした上で改めて結婚させること。武家の男女でも家格が違い過ぎる場合はこの方法が採られた。

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