政談321

【荻生徂徠『政談』】321

 ●誓詞の事

 現在、誓詞が盛んに行われ、まるでしきたりのようになり、役目が替わるたびに誓詞を提出し、駕籠に乗る時や病気で欠勤する時まで誓詞を出しているのはよくないことである。聖人の法では、誓詞は出陣の前に出すものとしている。それも軍兵に対して出すものではない。大将より士卒に対し、賞罰を約束のごとく少しも違背しないと誓約するものである。総じて長く続くものは気持ちが緩み、失念もあって、誓詞を破ることもあるから、誓詞は一つのことに限るのがよい。たびたび誓詞を出すと、誓いに慣れて神明を恐れる気持ちが薄くなるため、却って嘘をつくことを教える媒体と化す。誓詞も世間になくてはならないが、誓詞を破るように仕向けるのはよくない。一つの事にのみ用いれば、人の心を固くして誓詞の徳もあるというものである。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。