政談301
【荻生徂徠『政談』】301
(承前) しかしながら大名の家来も皆知行所に住むようになり、徒士(かち)などといった者も渡り者を採用しなければ、田舎侍の頑なな心のために却って供の任務が済むとそのまま打ち捨ててもかまわないと思い、喧嘩沙汰になることもあるようだ。昔は車馬は道の真ん中を行き、徒歩は男女が道の左右に分かれて行った。これは礼法である。どの行列も礼譲が見事となるように、せめて御城下だけでもそうありたいものである。
[語釈]●渡り者 1、あちこちと渡り歩き、主人を替えて奉公をする者。2、1か所に落ち着かず旅をして回る者。3、他の土地から来て住んでいる者、よそ者。徂徠は出替わり者を念頭に置いている(巻一参照)ことから、ここでは1および3の意。
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