政談280

【荻生徂徠『政談』】280

(承前) 将軍の代が末になると、親類や親しい人たちの取り成しで人物を探すのは、依怙贔屓をしていると思われるのを嫌う気持ちからである。また、老中の職は細かな事務には関係しないことから、今の老中は各職掌に暗く、下役人が担当する些細な事までも聴いて奉公に精を出すという風潮のため、心は高揚し、退出すればくたびれて屋敷に戻ると休息して親類や親しい人にも会わない。朝になるとどうでもいいような来客の相手をするのが務めのように思い、これでは人物を見出だす方法を知らないのも当然である。番頭(ばんがしら)も組の者たちに心安く会おうとしないのでは、組の者たちの器量や人柄をどうして知ることができようか。


過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。