政談202
【荻生徂徠『政談』】202
(承前) この他、作事・普請についても一つに合わせるべきである。今は作事(さくじ。「さじ」という読みも一部で行われていた)奉行・普請(ふしん)奉行に分かれているが、これはよろしくない。武備と武器は古は兵部(ひょうぶ)の管轄で一緒だった。その他の諸細工の類もまた一つにすべき。古は工部の役人が管轄したため、一切の細工に役人が通じており、器物も立派だった。今は職人は町奉行の下につけ、これを担当する役人がいないために、すべて職人任せで、費用のことばかり役人はあれこれ言う。また、今はお上の好みに合わせて奥の役人たちが忖度し、競り合うことから、不正の温床にもなっている。学問ならびに諸芸もまた一つにすべき。以上、いずれも老中・若年寄それぞれに担当を持ち、その下にそれぞれの配下の役人を置くのがよい。
[語釈]●作事奉行・普請奉行 職掌が重複する部分もあるが、おおむね作事は大工を中心とした建築・建設、普請は土木工事を指す。この両者に小普請奉行をあわせて下(しも)三奉行といい、最も格上の作事奉行を務め上げた者はは、大目付・町奉行・勘定奉行などに昇進した。いずれも老中の配下で高位の旗本が任ぜられた。2000石。造営など重複すること、建築と土木は一体でやるほうが全体の仕上がりがよいことから、徂徠はこれを一つにすべきと説いている。しかし、幕府瓦解まで統合されることはなかった。
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