政談200

【荻生徂徠『政談』】200

 ●諸役人職分支配を分つ事

 老中は大名、若年寄は旗本が就任することから、大名・旗本の官位の昇進、役禄の増減、参勤交代、縁組・養子・家督の件は、それぞれ月番以外の者も処理すべきことである。いろいろな政務を一纏めにして月番にのみさせて、ひと月経てば交代となるために御用繁多となり、勤め方が粗略になる。『周礼』(しゅらい)に役人を六官に分け、後世にも六部に分けているのは、古来の良制である。老中と若年寄も役目を分けて担当させたいものである。


[語釈]●六官 天官(諸政総括)・地官(教化)・春官(祭祀典礼)・夏官(軍旅兵馬)・秋官(獄訟刑罰)・冬官(水土)。 ●六部 吏部・戸部・礼部・兵部・刑部・工部。これは隋唐時代に始まり、我が国の律令制にも影響を与えた。ちなみに、漢文では古来から読み慣わしがあり、「六」は「りく」と読む。六官は「りくかん」、六部は「りくぶ」。ここは漢文ではないし、現代的に「ろくかん(ろっかん)」「ろくぶ」と読んでも差し支えない。月を「げつ」(「月曜」「月給」など)「がつ」(「六月」「月光菩薩」など)といったように音読みでも言葉によって異なるのは、呉音と漢音の違いによるもので、仏教用語の読みとそれ以外の読みといった伝来に影響したものが多いため。


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