政談188
【荻生徂徠『政談』】188
(承前) 幸い、古に勲階という制度がある。勲一等より勲十二等まで十二階ある。勲一等を三位(さんみ)に当てたようだが、『令義解』(りょうのぎげ)の官位令のくだりを見るに、勲一等は古は三位の後に列するとあり、これによれば三位には該当しない。十二階いずれも庶民の装束である。されば官位とは別のもので、古はその人の勲功により田地を賜る上で、この十二階の制度があったようである。あくまで庶民に対するもので、官人の事ではないことから、今に至るまで朝廷ではこれを用いていない。幸いにも朝廷が用いてないのだから、今はこれを武家で用いることとし、これによって武家の格式を定め、更に今のように役儀によって段々に組み上げ、一役一席の仕組みを廃して、席を勲階の順序にして、同じ階級の席をいくつも置けば、その人の才能によって役儀を申しつけたり替えさせることができて便利であろう。また、諸役に頭(かみ)・助・丞(じょう)・目(さかん)の等級をつけるのも気持ちよくできることだろう。頭・助・丞・目の等級については以下に記す。
[語釈]●『令義解』 833年(天長10年)に淳和天皇の勅により右大臣清原夏野を総裁として、文章博士菅原清公ら12人によって撰集された律令の解説書。全10巻。この書物によって、大宝令・養老令が伝えられている。『国史大系』所収。 ●頭・助・丞・目 律令官制における四等官。頭は官司により守、助は佐・介といった字も使う。江戸時代は名目上の官位として使われ、例えば頭は浅野内匠「頭」、助は大石内蔵「助」・吉良上野「介」、丞は同じく赤穂浪士の潮田又之「丞」・菅谷(すがのや)半之「丞」など。目は使われていない。
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