🆕【諸乗法数】
はじめに
仏教用語に「法数」という言葉があります。これは数字を含んだ語句のことで、この法数はそれこそ無数に存在します。
この法数を集めて解説した書物が古来より中国で複数編輯され、慧遠の『大乗義章』を嚆矢として、智顗(ちぎ)の『法界次第初門』、李師致の『法門名義集』、懐顕『律宗新学名句』など、唐代から明代にかけてこの種のものが次々と作られました。
我が国では行深の『諸乗法数』が好まれたようで、複数の版本が発行されています。この本は明の華厳僧である姑蘇沙門行深が当時散逸していた『賢首諸乗法数』を復元したものです。本書のあとも同様の書がそれぞれの宗派の立場からその教理にもとづいて説明を加えたものとして出されています。
仏教用語については精巧な辞書類がいろいろ出され、現在はネットで電子版も利用できることから、調べたい語句を検索すれば瞬時に出てきます。ただ、どんな言葉でも引けるわけではないようで、本書に出ていながらその説明がなされていないものが多々あるようです。
そこで、『佛像圖彙』同様に無謀ながら『諸乗法数』の訳注のようなものをやってみようと思い立ち、先日来始めたところです。
とはいえ、全くの門外漢が専門用語の解説などできるわけもない。そこで、『佛像圖彙』でご解説を頂いている冢堀庵先生(在家ながら僧籍のある方)に今回も一つひとつご解説頂き、その後僭越ながら私が改めて平易な表現にしたいと考えています。
ということで、まずは先生から頂いたご解説をそのまま紹介することと致します。先生は旧字を使用されており、今回はそのままとします。必要に応じて(カッコ)で注釈を入れることもあろうかと思います。
仏教語は宗派により一つの言葉でも違う意味に解釈していることが少なくないようですが、本書ではもともとの意味はどうであったかもいくつか分かるものと思われます。
至らない点が多々あろうかと思います。お気付きの点など、ご指摘ご教授頂ければ幸甚です。1回につき2~3語ずつ取り上げます。
一眞 華嚴疏に云う「一眞法界本(もと)無内外(うちそとなし)と。
註 絶對の眞理の事。次項の一乘も同じ。 華嚴疏 正式には華嚴經疏。八十巻本の華嚴經の注譯。唐の澄觀の著。華嚴大疏とも謂う。
一乘 法華は十方佛土 中に唯一乘法有るのみ。
註 法華一乘の語源。何處やらの教團が振り回す物。
一身 華嚴十方諸佛 來りて其一法身を同じくす。
註 全ての佛も一つに歸する事。亦一つの佛も無數であると謂う華嚴の教理。
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