政談127

【荻生徂徠『政談』】127

(承前) 現在の諸大名は古の諸侯と同じであり、土地の産物を貢ぐ必要があるのは古例に徴しても、道理に照らしても当然であり、献上しなければならないことは明白なのに、今、そのきまりがないのは、室町家の御代の末に至って天下が大いに乱れ、武家が諸国郡を押領し、以後久しい間郡県制度が行われたために租庸調の義務がなく、産物の献上も求めなかった。その後太閤秀吉公が天下を統一されたが、文盲のため文献から子細を知ることがなかった。徳川の御代となってからは、大坂の陣の翌年に東照宮(家康)が御他界あそばされたためにこの制度が定められず、これが慣例となって大名は貢ぎ物を出す必要がないと心得るようになったが、大きな間違いである。


[注解]●文盲 原文のまま。ここでは読み書きができないということではなく、秀吉は深く学問を修めることがなかったために、古今の制度についてもほとんど知識がなかったといったほどの意味。


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