政談123

【荻生徂徠『政談』】123

 ●公儀御身上の制度の事

 公儀の財政状況については、右に述べたように、旅宿のような制度を改めなければ豊かになることはない。現在、役人が集まって議論をし、いろいろ倹約して貯えが無くなることがないようにしても、人々の好みが変化する世となっては、結局元に戻ってしまう。されば、当分は飯の上にたかる蠅を追い払うような対処の仕方をするしかない。議論の末に倹約の定めを絶対的なものとし、これを末永く守らせたならば、財政が行き詰まることはあるまいと思う人が多いが、それは目先のことだけを見てその前後を広く見極めることを知らない了見であり、鼻の先のこざかしい知恵というものである。


[注解]●公儀御身上 こうぎごしんしょう。公儀は幕府、身上は財政状況。「身上をつぶした」などとよく言うが、個人や家、組織などの財政状態が破綻すること。

 続いては「旅宿」の現状、つまり本来の土地から城下へ武家や商人、職人らが集まることで、無駄遣いがひどくなり、武士は軽視され、本来の土地を愛する心が失せてしまったことに対してどのように立て直すかの提案(建議)です。


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