政談59

【荻生徂徠『政談』】59

(承前) 私が17、8歳の時に暮らしていた上総(かずさ)の国で次のようなことを聞いた。加賀の国では「非人」が1人もいない。もし「非人」が出れば小屋を建ててそこに住まわせ、草履を作らせ、縄をなわせ、種々の作業を申しつける。加賀守殿は担当の役人を付けておき、出来た縄や草履を売り、再び店を持たせるようにさせた、と、加賀より逐電して上総に住み着いた者から聞き、まことに仁政であることと感心した。今はどうなっているだろうか。


[注解]これは授産施設で手に職をつけさせたり勤労の大切さ、喜びを知らしめるもので、のちに長谷川平蔵宣以(のぶため)が石川島(佃島)の人足寄場(にんそくよせば)を設置して大々的にやるようになり、各地に広まったものですが、それ以前にもこのような例があったことがわかります。ちなみに、この人足寄場はのちに巣鴨に移転、所管がいくつか変わり、更に移転して現在の東京の府中刑務所となっています。現在は法務省東京矯正管区に属する刑務所で、

B級(犯罪傾向の進んでいる者=再犯者)

F級(外国人受刑者、Fはforeignerの頭文字)

M級(精神障害者)

P級(身体上の疾患または障害のある者)

 を収容する国内最大規模です。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。