佛像圖彙268
【268】計升童子(けいしょうどうじ)
[通釈]
辨才十六童子第六
計升童子 梵字はウン
又悪女童子と名づく。
金剛印
本地は地藏菩薩
[解説]
計升童子は悪女童子ともいわれ、本地は地蔵菩薩とし、両手に升を持って、真価の顕現を司る。升の中の棒は升に持った穀物をならす棒。「斗搔き」という。〼という絵文字の中の斜線はこの象形。手相の吉相にも「升かけ筋」がある。
[雑記] 「百年後の仏教」
【41】大森亮順(1878-1950 明治-昭和時代の僧,仏教学者。大正5年天台宗務庁総務となり、のち宗務総長を昭和17年までつとめる。大正大の設立にかかわり、昭和13年学長。この間3年より東京浅草寺住職。天台宗東部大学黌卒。編著に「天台宗全書」など)
「世界交通の發達が列國の政治經濟の事情を急激頻繁に變化せしめ、從て一般思想界が其影響を受けて常に大なる渦を巻き起し混亂しつゝある中に、獨り佛敎のみ圏外に居るを許さないのは勿論である。今後の百年間に佛敎界は恐らく空前の大變動を生ずるであらうが、私は今それを豫言する何等の智識もない、只漠然と自分の想像を申して見るだけである。
傳敎大師は「末法には唯名字の比丘のみあり、この名字をば世の眞實となす更に福田なしたとひ末法の中に持戒の者あらんも既に是れ恠異(かいい。怪異)なり市に虎あるが如し」と仰せられた、大師の在世も既に名字無戒の比丘のみであつたとすれば、之を現今の實際に見今後百年の間には更に一層甚しきものがあるであらうと思ふ。
一 佛敎敎理の研究究は篤學なる外人の刺撃を受けて大に盛んになる、但し僧侶よりは寧ろ俗人の間に多く研究される、從て信仰の方面は反て衰へる。
二 既成宗派は今後當分の間は大に分裂し遂に或は百餘派にも達するが其後種々の事情に迫まられて合併統一が始まり百年の後には僅かに五派か六派になる。
三 寺院は貧小のものも二十年三十年は氣息奄々として餘喘(よぜん。死にかかっている)を保つが遂には漸次大寺院に併合せられ、極く小數の強固なる大寺院のみ殘ることになる、而して各寺院の財産は個々の所有を離れて凡て所屬宗派の有に歸する。
四 僧侶は單純なる儀式執行を掌る職業的のものとなり終る爲に外形上名字の比丘としては現今より反て整頓されたものになる、但し特に傑出したる名僧高徳は全くなくなるであらう。 學問僧、傳道僧、事務僧、などはなくなり其等は凡て俗人の信徒が之を取扱ふことになる。
五 日本の神道は神佛一致の思想が再興して遂に佛敎と共に宣傳され又は其儀式を執行することになる。
以上は夢の樣な私の想像である、私は現今の佛敎は非常の速力を以て舊形の蝉脱(せんだつ。抜け出す)に急ぎつゝると思ふ。而して遂に新らしき何ものかゞ其處に生れ出づることと思ふ、乍併變化の一々には皆佛祖の眞精神が常に顯現しつゝあるものと信ずるのである。」
長文の回答です。要約すると、 国際化の渦に、当然の如く仏教ものみ込まれる。伝教大師は「末法の世になれば、名目だけの僧ばかりになる」と述べているから、百年後の日本は、戒律をたもっていない形だけの僧侶に満ちていると予想できる。
一 仏教教理の研究は、海外勢の参加により大いに盛り上がる。ただその中心を担うのは僧侶ではないため、信仰の面は衰退する。
二 今後、仏教はさらに分派を繰り返すが、百年をめどに統一が始まり、五六派に纏まる。
三 寺院も百年をめどに統合の動きを見せる。各寺院の所有する財産は、宗派全体のものとなる。
四 僧侶は儀式を行うだけの職業的な存在となり、名僧が誕生する機会はなくなる。学問僧、伝道僧、事務僧などはなくなり、それらは凡て在家信徒が担うことになる。
五 神道において「神仏一致の思想」が再興して、ともに儀式を執り行うようになる。
仏教界には旧型から脱して進歩していこうという姿勢が見られるが、そこには仏祖の精神が満ちていると信じている。(要約以上)
今までの諸氏の回答をまとめたようなものになっており、もちろん大森師はこれを書いて寄せた段階では他の回答など知る由もないわけですが、百年後には多くの宗派は統合され、僧侶は職業化が進み、将来は名僧といわれる人の出現にかかっているが、基本的には在家に期待を寄せています。仏教界も因襲に囚われてはいけないということです。
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