佛像圖彙238


【238】十禅師(じゅうぜんじ) 


 [通釈] 十禅師 梵字はカ 桓武天皇の延暦二年に降臨された。天児屋根尊(あめのこやねのみこと)であり、春日大明神の一柱である。 本地は地蔵菩薩 


 [注] 天児屋根尊 天児屋命。神話に登場する神。中臣氏及び藤原氏の祖神(おやがみ)に当たる存在として知られる。 


 [解説] 十禅師は、国常立命(くにのとこたちのかみ)から十番目に当たるのでこの名がある。ここまで来ると数合わせの感が否めない。本地として地蔵菩薩としている点なども。 


 [雑記] 「百年後の仏教」 

【20】文学士 常盤大定(ときわだいじょう 仏教研究者、浄土真宗大谷派の僧。晩年は浅草本願寺の輪番を務めた。) 

「普魯西(プロイセン)が建國百年にして大賢カントを出せるに比すれば我國は今後五十年にして大賢を出すべく、形式は泰西(たいせい 西洋)に學ぶもその精神に於ては大乘佛敎を背景とせるものにして、この大思想は其後東洋全般を動かし百年後には國力に於てのみならず、新文化の上に於て東洋の盟たるに至り、以て世界の文化に一轉機を與へん。

  西洋に於て最も今後に期待すべきは何といつても先づ指を獨逸(ドイツ)に屈すべし甞て敗殘の屈辱を蒙りし後七八十年にして獨逸大帝國となれる過去を以て將來を推すに今日の敗殘は、眞によく大乘佛敎に觸れ、無我の眞義に徹せしむるを得ん。印度思想の一端のみによつて、ショーペンハワーの如き大組織あらしめたるに見れば、佛敎の根本思想に觸れたる上の新組織には盖し刮目すべきものあらん。

  斯くて百年後には東西兩洋共に大乘佛敎の精神骨髓を以て思想の根柢とすべきも、必ずや共に佛敎を以て標榜とせずして、新思想を以て任ぜん。而して佛敎を標榜する敎界の状況は今日よりも好望なる見込なし。大體上人格中心の獨立敎國のみが眞の存在価値を有しまた社會事業や慈善事業より離れたる眞の宗敎活動のみが敎化の任に當るを得べし。隨つて其數に於て寥々たるべき眞の宗敎的人格は、却つて居士の中より現はるべく、是に到りて大乘精神一層能く徹底すべし。」

  長文の回答。言いたいことは、現在の状況では発展は望めず、優れた宗教的人格は居士(在家信者)の中から現れるようにしなければならない、ということ。氏は大乗仏教こそが東洋・西洋ともに思想の根柢とすべきものとしながら、「社會事業や慈善事業より離れたる眞の宗敎活動」だけが教化の任にふさわしいとしています。社会事業や慈善事業は救済であり、抜苦与楽の具体的行為として褒められるべきですが、氏はこういうことは「真の宗教活動」とはみなしていない。手厳しい感もありますが、俗事に忙殺されず、ひたすら仏道に精進する大賢人が必要ということでしょう。 

 結局、仏教の盛衰は人にありということ。 

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