政談17
【荻生徂徠『政談』】17
(承前) では、よい制度とはどのようなものかというと、田舎から出て来る奉公人の場合は、天領は代官、藩は地頭へ、名主より今年は誰々と申す者が何人奉公に出るという事を届け出るようにし、代官・地頭へ届け出ずに勝手に奉公に出すことを固く禁ずるようにする。名主に隠して奉公に出る者があれば、その者はその村を欠け落ちした罪により重く罰する。一方、雇う側でも、武家・町方に限らず、すべてその奉公人の現住所の地頭・代官へ届け出て証文を受け取るようにする。その証文には、その奉公人の実家の村の名並びに奉公人の名を人別帳のように記し、併せて年齢、給金の高も記し、地頭・代官による「この者は当知行所または支配所の者に相違なし」といった認めを添えれば済むことである。たとえその奉公人が差し障りがあって雇われている所で名前を変えていても、手形には実家の人別帳に載せた名前を記してあるから実名が分かる。そもそも差し障りがあるからといって名前を変えることは天下の禁制であり、人別帳に記載された名を勝手に変えることは天下等しく処罰すべき。人別帳は昔はとても重要なものとされ、天皇でさえ拝されたほどのものであるのだから、微細な相違もないようにしなければならない。
注解はありません。
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