政談3
【荻生徂徠『政談』】3
〇江戸町中ならびに武家屋敷のしまりの事
当節、盗賊が各所に押し入って、人を殺し、物を盗み、あるいは火を付け、あるいは夜中に人里離れた所で待ち受けて、追剥をするでもなく、刀を抜いて人を追いかけて悪戯をする輩がいる。博奕(ばくち)の類は数知れず。また、捨て子があると聞けばどの家も騒ぎ、人を出して屋敷の前で見張って捨てさせないようにするばかりで、これを止めさせようとする者がいない。それぞれの武家屋敷の塀の外は公道であるから屋敷で管理する者はなく、幕府の道奉行の管轄であるが、広い江戸の道々をわずかな奉行では目が届くわけもない。
[注解]商家などに押し入って丁稚、女性に至るまで皆殺しにして金品を奪い、火を付けて逃げる悪人たちは時代劇の火盗改・長谷川平蔵の定番ですが、実際にはこれほど凶悪な事件はめったになく、特に吉宗の頃は治安もよくて世情は安定していた。徂徠があたかも江戸は凶悪犯罪や捨て子が多いように誇張しているのは、むしろ安定しているからこそ気を引き締めなければならないし、特に武家屋敷は外の事は我関せずといった態度が強く、こういう無責任な社会ではいずれいろいろな事が起こるべくして起きるといった警告の意味が強い。現在、しきりに国難国難と言っている者がいますが、恐らくは外患を指しているのでしょう。国内は安全だが、外に困った者がいるということ。しかし、国内は果たして安全か。よく言われているように、狭い国土にひしめくような数の原発がある。2~3か所しかなくても狙われたらひとたまりもないのに、なんと54基。世界第三位の数。これをすべて攻撃から防ぐのは無理。そのためかどうか、原発を攻撃から防御する態勢が全くとられていない。徂徠が説くのがこの点で、ひどい状態になる前に、常に先手を打つことが必要でし、打っても万全とはいかない。それでも打てる手はすべて打つことが重要だという。打つ手が筋違いであれば、せっかくの防御防衛も無駄になる。守りを固める一方、外患を外患でなくさせるための知恵と行動、相手との信頼関係が何より大切で、それを一切しなければ、真の国難を招いているのは誰か、という話になります。言わずもがなですね。つづく
0コメント