司馬江漢随筆・続14

【江戸時代の随筆・司馬江漢】続14

 またある時、磯部に流れ着いたものがあり、見てみると餅のようなものがたくさん転がっている。いったい何かと拾い上げてじっくり調べてみたところ蠟(ろう)であった。暴風で難破した船のものらしい。

 我が国の人の操船技術が未熟であることを西洋人が評して言うには、「中国人は盲乗、日本人は片目乗」と。


[注解]海の漂流物の続き。今度は江漢自身が拾ったものについてと、西洋人が中国と日本の船乗りについて侮蔑した言葉を紹介している。「盲乗」は原文のママで、こんにちでは許されない表現ですが、盲目の人が操舵している例え、「片目乗」は字は片目は見えているということですが、要するに「あきめくら」のこと。西洋の画法を習得し、西洋事情に詳しい江漢は西洋の立場から日本を見ることが多く、この段も西洋人の評とされるものを肯定的に引用して自分の考えに代えています。江戸時代の人ゆえ外国に渡航したことはなく、長崎でオランダ人や通詞らと会って知識を吸収し、わが物とした。それだけに西洋への憧れが肥大化した部分もあり、日本を小さく見るようになった。日本の船に関する技術もなかなかのものですが、ただ西洋を見ると大航海、七つの海をまたにかけといったことを古くからしており、圧倒させられてしまう。中国は歴史的に西へ西へと進出、交易したり侵略して、東は海と、遠く離れた日本その他小さな島しかないといったことで海洋進出に熱心ではなく、造船技術も操舵もあまり進歩しなかった。元寇が破れたのも、大陸の人たちの技術の未熟さが原因ということも古くから言われています。

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