身分制度(6)

【身分制度】6

 商人を毛嫌いした武士ですが、タテマエと実際が違うのは世の常。あからさまな保護政策はとらないものの、重税を課すでもなく、悪事に対して罰金をとるでもなく、冥加金・運上金といった名目でいくらか徴収することはあったものの、これも天保の改革ではわざわざ全廃している。こうなると商人は儲けがまるまるフトコロに入るのだから大歓迎。農民が年貢であえいでいる中、商人たちの環境はますますよくなっていったものです。

 幕府も大名も財政難で、倹約をしても微々たるもの。年貢を上げるといっても生産力が上がらなければ農民の負担ばかり増え、生活が圧迫される。副業しても豊かにはならない(副業として生産されるようになった作物や工芸品が名産品となったものもあるものの、どこでも誰でも可能というわけにはいかない)。農民から取るのも限りがある。新田開発をして生産を増やすのが基本ですが、開発後数年は年貢が免除されるため、すぐにもカネがほしい幕府(天領からの上がり)や大名らは免除期間を短縮しようとしては農民たちの反発を買い、中には大規模な百姓一揆まで引き起こした。一揆もまた藩にとっての恥。打ち壊しなどの乱暴行為はまだ取締りや弾圧の口実ともなるが、究極の一揆、逃散(ちょうさん)は農民、領民がよその藩へ難民として脱出するため、これがあるとその藩は取り潰しの対象にすらなったほどです。しかも、逃げた人たちがよその土地で藩の実態、悪政を言いふらすため、これ以上の恥辱はない。藩主が出来た人物ほど農民らに理解があり、藩士(代官ら)の横暴な振る舞いを憎む。直接、農民に代わって受け入れた藩主が逃げられた藩主を説得するといったことは内政干渉にあたるといったことから特に何もいないものの、農民を失った藩では武士が米や野菜を作るわけにもいかず、なんとか戻るように逆に受け入れた藩主に頼み込む。恥ずかしい、みっともないことばかりなので、何をおいても逃散をさせないように日ごろから村の動向、農民らの様子をそれとなく監視した。しかし、監視するような藩ほど藩主がダメですね。人を信じず、為政者としての矜持も器量もない。立派な藩主は未然に防ぐ意味から、悪評の代官らを更迭して混乱の芽を摘むことに腐心したものです。一揆というと首謀者らは極刑というのが決まりではあるものの、これも個々のケースでまちまちで、農民側はほとんどお咎めがなく、代官ら訴えられた側の罪が認められたものも時代が下るとともに増えています(一揆の具体的なものは後日に)。つづく

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