佛像圖彙143

【143】上行無辺行(じょうぎょうむへんぎょう)


[通釈]

上行無辺行 上行菩薩と無辺行菩薩。『甫正記』にいう、「上行菩薩とは最上の大法を行われれる故に名づけられた。無辺菩薩とは功徳が無辺であるが故に名づけられた」と。


[注]

上行無辺行 主に日蓮宗で祀られる四菩薩のうちの二尊。『法華経』涌出品に登場する。日蓮宗の本尊は主に一塔両尊(釈迦如来と多宝如来)だが、更に四菩薩を配する事も多い。

四菩薩 上 行 じょうぎょう

      無辺行 むへんぎょう

      浄 行 じょうぎょう

      安立行 あんりゅうぎょう 

甫正記 輔正記の誤刻(或いは省略)で、正しくは法華文句輔正記(ほっけもんくふしょうき)。天台大師の法華文句に唐の道暹(どうせん)が更に註釈を加えたもの。池上本門寺等日蓮宗の寺院では、水場に石像を祀り願掛けのため洗い清める習俗が有る。


[解説]

上行無辺行菩薩は、四菩薩のうち上行と無辺行のことだが、本書では図を一つにしている。外見は全く同じということか。

四菩薩は宗派により違いがある。

密教は普賢菩薩、文殊菩薩、観音菩薩、弥勒菩薩。一般に四菩薩とはこれを指す。

天台宗は阿弥陀如来の脇侍として金剛法、金剛利、金剛因、金剛語。

『華厳経』は、法慧、功徳林、金剛幢、金剛蔵。

日蓮宗・法華宗は『法華経』の上行、無辺行、浄行、安立行。


[雑記]

 図解の中にある合字について。

 この字は「菩」「薩」の二字を一字で合わせたもので、それぞれの草冠を取って合わせたものです。「菩薩」という字は画数が多く、書くのも大変ですが、一方、仏書ではよく使われる言葉なので、多くはないもののこの合字で間に合わせることも古くから行われてきました。尊い「菩薩」をこのように省略するとは何事かと我々凡俗は逆に疑問に思ってしまいますが、もちろんお経本ではこのような合字は使いません。あくまで私的な書き物や本書のような一般向け解説書だから許されるのです。

 合字は主に漢文の送り仮名や書簡で使われたものですが、以下のようなものがあります(前出ですが再度)。「トモ」は「いえども」「いうとも」の「とも」です。これ以外にも「ム」(ござる。江戸時代に芝居小屋で客に茣蓙(ござ)を貸す場合に、△の記号を用いたことによる)といったものなどもあります。

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