佛像圖彙95
[通釈]
準(准)胝觀音 梵字はボ
『止観』にいう「この観音は如幻三昧等の三昧に入り、人道の三十三障を破り、驕慢を降伏(ごうぶく)し、仏性を現わされる」と。○天人丈夫観音とも。
[注]
止観 書名。『摩訶止観』。天台大師の著。画像は『摩訶止観見聞』(万治2年)。
如幼三昧 「如幼」は「如幻」の誤刻。如幻三昧とは、身体を様々に変化させて衆生を済度する事。
余説。『拾芥抄』(中世に編纂された類書)の六観音の条に「今案眞言宗幷法相宗除准胝觀音奉加不空羂索觀音」(今案ずるに、真言宗ならびに法相宗は准胝觀音を除きて不空羂索観音を加え奉る)とあり、また
千手 破地獄道三障 地獄道の三障を破る(以下同じ)
正 破餓鬼道三障
馬頭 破畜生道三障
十一面 破修羅道三障
胝胝 破人道三障
如意輪 破天道三障
とある。真言宗では後述のように高野山で准胝堂で僧侶となるための得度の儀式が執り行なわれてきたほど准胝観音は重視されており、『拾芥抄』で真言宗では准胝觀音を除くというのは解せない。
[解説]
准胝観音は、準胝観音、準提観音、准胝仏母、天人丈夫観音とも。真言系では変化観音とされ六観音の一尊に数えられ、天台系では観音ではなく仏母とされる。インド・チベットでは一般に仏母とされ、変化観音とはみなされない。インドでは観音は男性名詞のため男尊とされるが、准胝は女性名詞であり、女尊として表現される。
真言宗の開祖空海が高野山の開基の際に、僧房の次にまず准胝堂を建立し、准胝観音を弟子たちの得度の本尊として祀り、のちに高野山が荒廃した際にも僧俗の手によって庫裡にこの准胝観音を安置し守り続けられた。それゆえ、准胝堂の補修が行なわれた昭和の時代になるまで、高野山では准胝堂で僧侶となるための得度の儀式が執行されていた。真言宗醍醐派の開祖・聖宝尊師がこれに倣って醍醐寺の開基に准胝観音を勧請し、その孫弟子の仁海は六観音に准胝観音を加え、その後も長く民衆の信仰を集めている。俗世間では観音さまの中では知名度がやや下がるが、むしろ出家の世界で重要視されている。
真言は「オン・シャレイ・シュレイ・ジュンテイ・ソワカ」。他に長咒の「ナモサッタナン・サンミャクサンモダクチナン・タニヤタ・オン・シャレイ・シュレイ・ジュンテイ・ソワカ」があるというが不詳。
画像は『七仏倶胝仏母心大准提陀羅尼法』(写本、年代不明)
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