佛像圖彙69

【69】白象王菩薩(びゃくぞうおうぼさつ)


[通釈]

白象王菩薩

白象とはすなわち理性を表し示す。王とは自在無碍の意味で、いわゆる薩埵(さった)の理性に万法を具えられ、衆生済度のため自在の妙用をお使いになられる。その威相にちなんで尊名としたもの。


[注]

度生 どしょう。衆生済度。この世の生きとし生けるものを救済すること。

威相 八相の一つ。威厳の相。態度が堂々としていて、頼もしい印象を与える人が持っている相のこと。八相は八相成道(はっそうじょうどう)。釈迦が衆生を救うために示した八種の相。一般に降兜率(ごうとそつ)(兜率天から下ったこと)・託胎(母胎に入ったこと)・降誕(母胎から出生したこと)・出家・降魔(ごうま)(菩提樹下で悪魔を降伏させたこと)・成道(悟りを得たこと)・転法輪(てんぽうりん)(説法・教化したこと)・入滅(涅槃に入ったこと)の称。釈迦の一生における八大事で、成道が中心となる。ちなみに、俗なものとしては、人相上の八種の相。すなわち、威・厚・清・古・孤・薄・悪・俗の称も八相といい、「威相」という語そのものはこちらに依る。


[解説]

 白象王菩薩。慈悲の大きさを、象の大きな力で例えた菩薩。笛を吹いているのが特徴。


[雑記]

 この場を借りて、引き続き『梁塵秘抄』の作品を紹介していきたいと思います。


130 仏に華香奉り、堂塔建つるも尊しや、これにすぐれてめでたきは、法華経持てる人ぞかし

華香(はなこう) 尊し(とうとし) 持てる(たもてる)

 仏さまに香華を手向けたり、さらにはお堂や仏舎利塔を建立することも、とても尊いことである。しかし、それ以上にすばらしいのは、法華経に帰依し、いつも念ずる人たちであることよ。


 『梁塵秘抄』は後白河法皇が自身で集めたもので、庶民の間で流行ったり口ずさまれているいわば歌謡曲といえるものの集成であり、とても貴重なものです。原本は膨大な数だったと推測されるものの、その大半が失われていますが、先年、一部が新たに発見され(写本)、まだ失われているものが日の目を見る可能性は無きにしも非ずです。

 政争や災害、疫病など、世の中が不穏で不安があふれる鎌倉時代は新仏教が次々と生まれた時代でもありますが、当時の人々が強く仏教に信仰を寄せたこと、特に法華経に強く惹かれたことは必然といえるかもしれません。

 袈裟に法衣姿の尊像でもわかるように、後白河天皇は深く仏教に帰依され、兵乱により失われていた東大寺の大仏を再建するなどし、『梁塵秘抄』の編集もその一つとして高く評価されています。画像は『天子摂関御影』より「後白河院」藤原為信 画。

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